トップページにあったカウンター値の素数判定と完全数判定はいかがでしたか? 楽しんでもらえたでしょうか? ここでは,素数と完全数にチョットでも興味を持っていただいた方に,素数や完全数に関する面白そうな話題をちょこっとしてみたいと思います。
まずは,あなたのカウンター値320よりも小さい素数は,, 1, 2, 3, 1, 2, 3, 1, 2, 1, 2, 3, 1, 2, 3, 1, 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97, 101, 103, 107, 109, 113, 127, 131, 137, 139, 149, 151, 157, 163, 167, 173, 179, 181, 191, 193, 197, 199, 211, 223, 227, 229, 233, 239, 241, 251, 257, 263, 269, 271, 277, 281, 283, 293, 307, 311, 313, 317の81個です。 また、320よりも小さな完全数は6, 28, 496, , 1, 6, 8128, 1, 6, 28, 496, 1, 1, 6, 28, 496, 8128, 1, 6, 28, 496, 1, 6, 1, 6, 28, 1, 6, 28, 1, 1, 6, 28, 1, 6, 1, 1, 6, 28, 496, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 6, 28の241個です。
さて,いきなり質問です。 素数は一体いくつあると思いますか? 100個? 200個? いやいや,10000個ぐらいはあるんじゃない? いろいろ意見はあるかもしれません。 現時点では,上に書いたように,少なくとも81個はあるということだけはいえますね。
ところがです。 驚いたことに,素数は無限個あるんです。 しかもオッタマゲタことに,この事は今から2000年も前に証明されていたんです。 証明したのは,著書「原論」で幾何学の、いや、数学の根底を作り上げたといわれるユークリッド(BC265?-BC325?)です。
命題1: 素数は無限個存在する。
では,ユークリッド大先生が考えた証明を見てみましょう。
まず、「素数は有限個しかない」と仮定します。 そしてそれらを小さい順に並べて,p1=2, p2=3, p3=5, …とし、一番大きな素数をprとします。 つまり素数はr個だよと仮定したわけです。 ここまではイイですか?
つぎに、新しい数Xを、
として導入します。 つまりXは、「素数全部を掛け算して,それに1を加えた数」ということです。
さて、このXは素数でしょうか?
Yes?
No?
ファイナルアンサー?(さんざん引っ張っといて,CM)
答えはNoです。 というのは,最初に「素数は有限個」という事を仮定しました。 で、その全部をかけ合わせて,さらに1加えた数がXというわけです。 だからXはp1よりもp2よりも、prよりも大きいことになります。ここでもしXが素数だとすると,Xは新しいr+1個目の素数ということになり,「素数はr個」という仮定に矛盾します。 なのでXは素数ではありません。
ここで1つ言葉を用意します。 素数でもなく,また0,1とも違う数(例えば8、57、284など)のことを「合成数」と呼びます。
証明に戻りましょう。 Xは素数ではありませんでした。 また0,1とも違います。 ですから上で定義したとおり,Xは合成数ということになります。 ところが,こっちにも問題があります。 Xが合成数だとすると,素因数分解が出来るはずです(覚えてますか?素因数分解。 中学でやりましたよね)。 ところが、Xの形から,Xをp1で割ると1余り,p2で割ると1余り,p3で割っても1余り,……,Xをprで割ってもやっぱり1余っちゃうんです。 ということは、Xは素因数分解が出来ない。 こりゃ困ったゾ。
どこがおかしいんでしょう? うーーーーん、困った…
おおっ、そうか!! 最初っからおかしかったんだ! そもそもの仮定だった「素数は有限個」というのがおかしかったんだ。
というわけで、素数は無限個あることが証明されました。
素数が無限にあることはわかりました。 では,今現在,どれくらい大きな素数が発見されているのでしょうか? アメリカのテネシー州立大学マーティン校のサイトhttp://www.utm.edu/research/primes/largest.htmlで調べた結果,1999年6月1日,Nayan Hajratwala, George Woltman, Scott Kurowskiの3氏をはじめとするチームはそれまでの素数記録を更新していました。 その数とは,
です。 とこれだけ聞いてもホントにすごいのかわかりませんね。 この26972593-1という数,普通に書こうとすると… 書けません。 ゴメンナサイ,この数,実は2098960桁もあるんです。 なので、とてもじゃないけどここには書けません。 チョットすごいのがわかりました?
Hajratwala氏は,自宅の300MHzのAptiva上で,プログラムを実行することでこの素数を発見しました。 こういうところに日本のマシンが使われたというのもなんか嬉しいですね。
現在発見されている大きい素数ベスト10を示したのが次の表です。
いくつ? | 何桁? | 誰が? | いつ? |
---|---|---|---|
26972593-1 | 2098960 | Hajratwala, Woltman, Kurowski, GIMPS | 1999 |
23021377-1 | 909526 | Clarkson, Woltman, Kurowski, GIMPS | 1998 |
22976221-1 | 895932 | Spence, Woltman, GIMPS | 1997 |
21398269-1 | 420921 | Armengaud, Woltman, GIMPS | 1996 |
21257787-1 | 378632 | Slowinski, Gage | 1996 |
4859465536+1 | 307140 | Scott, Gallot | 2000 |
3*2916773+1 | 275977 | Cosgrave, Gallot | 2001 |
2859433-1 | 258716 | Slowinski, Gage | 1994 |
2756839-1 | 227832 | Slowinski, Gage | 1992 |
667071*2667071-1 | 200815 | Toplic, Gallot | 2000 |
この表の桁数のところを見ると、Hajratwala氏たちが発見した素数がいかに大きいものかがわかると思います。
(3,5),(17,19),(1949,1951)等,2つの素数の差が2しか離れていないとき,これらを「双子素数」といいます。 双子素数もやはりたくさん発見されてはいますが,素数のように「無限個ある」のかどうかは未だにわかっていません。 次に示すのは,大きな双子素数ベスト10です。
いくつ? | 何桁? | 誰が? | いつ? |
---|---|---|---|
318032361*2107001±1 | 32220 | Underbakke, Carmody, PrimeForm | 2001 |
1807318575*298305±1 | 29603 | Underbakke, Carmody, Gallot | 2001 |
665551035*280025±1 | 24099 | Underbakke, Carmody, Gallot | 2000 |
781134345*266445±1 | 20011 | Underbakke, Carmody, PrimeForm | 2001 |
1693965*266443±1 | 20008 | LaBarbera, Jobling, Gallot | 2000 |
83475759*264955±1 | 19562 | Underbakke, Jobling, Gallot | 2000 |
291889803*260090±1 | 18098 | Boivin, Gallot | 2001 |
4648619711505*260000±1 | 18075 | Indlekofer, Jarai, Wassing | 2000 |
2409110779845*260000±1 | 18075 | Indlekofer, Jarai, Wassing | 2000 |
2230907354445*248000±1 | 14462 | Indlekofer, Jarai, Wassing | 1999 |
ここで目をみはるのはやはり発見された年かな。 トップ10のうち4つが今年発見されたもの。 また5つが去年発見されています。 次々と新しい双子素数が発見されていく,研究の盛んなのがよくわかります。 でもやっぱり「無限にある」のかはまだわかっていない,なんか不思議。
さて,素数ベスト10の表を見ると,2n-1という形のものがとても多いですよね。 実は,このような形の数には名前がついていて,メルセンヌ数と言っています。 で,メルセンヌ数で,かつ素数であるものをメルセンヌ素数といいます。 今度は大きなメルセンヌ素数ベスト10でーす。
いくつ? | 何桁? | 誰が? | いつ? |
---|---|---|---|
26972593-1 | 2098960 | Hajratwala, Woltman, Kurowski, GIMPS | 1999 |
23021377-1 | 909526 | Clarkson, Woltman, Kurowski, GIMPS | 1998 |
22976221-1 | 895932 | Spence, Woltman, GIMPS | 1997 |
21398269-1 | 420921 | Armengaud, Woltman, GIMPS | 1996 |
21257787-1 | 378632 | Slowinski, Gage | 1996 |
2859433-1 | 258716 | Slowinski, Gage | 1994 |
2756839-1 | 227832 | Slowinski, Gage | 1992 |
2216091-1 | 65050 | David Slowinski | 1985 |
2132049-1 | 39751 | David Slowinski | 1983 |
2110503-1 | 33265 | Welsh, Colquitt | 1988 |
はぁ〜、なんかもうただただ唖然としてます。
さてさて今まで素数の話をしてきましたが,お次は完全数の話をしましょう。 こちらの方は未解決のものが多いです。 まずは定義から。
トップページにもあるように,正の整数nの約数のうち,n自身を除いたものを全部足すと,その和がまたnになるときこのnを「完全数」といいます。 最初の完全数は6,2番目は28です。 完全数が研究され始めた紀元前6世紀ごろ,この2つの完全数を見て,「神様が6日間で世界を作ったのは6が完全数だからであり,月が地球の周りを1週するのに約28日かかるのも28が完全数だからである」と考えました。
その後,先ほど素数の所でも活躍したユークリッドは,完全数についても次の成果を残しています。
命題2: 2p-1が素数ならば
は完全数である。
では,説明してみましょう。 「証明」ではなくあくまでも「説明」です。
2p-1は素数であるという仮定があります。 上で出てきた「メルセンヌ素数」ですね。 ということは、Nの約数は,
1, 2, 22, 23, ... , 2p-1,
2p-1, 2(2p-1), 22(2p-1), 23(2p-1), ... , 2p-2(2p-1), N=2p-1(2p-1)
となります。 わかります? 最初の行は2p-1の約数で,次の行はそのそれぞれに2p-1をかけたものです。
さて、ここからNを除いたものを全部足してみましょう。
1+2+22+23+...+2p-1
+(2p-1)+2(2p-1)+22(2p-1)+23(2p-1)+...+2p-2(2p-1)
チョット整理すると…
{1+2+22+23+...+2p-2}{1+(2p-1)}+2p-1
だんだん混乱してきました?
第1項の{}の中を見ると,これは初項1,項比2の等比級数の和になっています。 高校で習った人もいるかもしれません。 これには公式があって,それを使ってもうチョット整頓すると,
(2p-1-1)2p+2p-1
だいぶきれいになりました。 もう一息です。 第1項を展開して、
2p=2*2p-1
であることを使って整理すると,
N=2p-1(2p-1)
となり、めでたくNが完全数であることが示されました。 ふぅ、よかったよかった。
実は,上の命題の逆も成り立ちます。 証明したのはオイラーです。
命題3: Nが偶数の完全数ならば,
となるようなpが存在し,しかも2p-1は素数となる。
この定理の証明は省略します。 でもこれら2つの定理によって偶数の完全数は全てみつけられるはずです。 また,今わかっている一番大きな完全数は,
だということもわかりますね。 でもホントにこの数の約数を全部計算して,そいつを全部足したらこの数に戻るのかなあ。 数学って不思議〜。
さてここでギモンが出てきます。 それは、
ということです。 ところが今のところ,奇数の完全数は1つも発見されていないんです。 もしかしたら存在しないんじゃないかともいわれていますが,「存在しない」ということも証明されていません。 勉強すればするほどナゾが深まっていく… ♪やめられない止まらない〜♪
というわけで,素数と完全数についていろいろと書いてきましたが,率直な感想は
ということですね。 僕は大学では幾何を専攻してたのでこの辺の詳しい話はまったく知らないんですが,「こんなこともわかってないのか」と驚いてしまいました。